Chasseur Japon × Voice
Kohei Yamada
山田 康平
Karyon オーナーシェフ
Profile
Kohei Yamada
大学卒業後、鮮魚店を経てフランス料理の世界へ。地方レストランやホテルで経験を重ねたのち渡仏し、ブルゴーニュ・ボーヌの「Le Benaton」、パリの「JADIS」で研鑽を積む。 2014年、地元にて自身の店を開業。その後も歩みを止めることなく、料理人としての表現を深化させ続け、現在はKaryonにて、これまでの経験、感性、生産者とのつながりを一皿一皿に映し出している。
インタビュー
interview
フランス料理の魅力は、「積み重ね」の先にある
フランス料理の魅力は、実は華やかさではなく“積み重ね”にあると思っています。伝統を大切にしながら、少しずつ時代や土地に合わせて変化していく。革新性が高い料理体系に思われますが、新しい料理が生まれても決して過去を否定しません。その積み上げ式の奥行きの深さとヨーロッパの大地の広がりが、フランス料理の一番の魅力ではないでしょうか。 フランスで修業していた頃も、最新の技法と、何十年も変わらない調理法が同じ厨房の中に自然に共存していました。仕事に関して合理的な考え方が強いので、便利な道具もどんどん取り入れますし、新しい調理法もどんどん取り入れます。シェフとしてのオリジナリティーや革新性が高い一方で、クラシックな調理法のルーツや意味にも強いこだわりを感じますし、ルーツ不明で説明不可な領域で受け継いでいるような調理法も大切にしています。 この相反しているような両輪で駆動している感覚もとても好きです。
道具は「料理人の思考」を映すもの
フランスの厨房で印象的だったのは、道具をとても論理的に、かつ大切に扱う文化でした。新しいか古いかではなく、「なぜこの道具を使うのか」が常に問われる。鍋ひとつにしても、料理人の考え方や性格がはっきり表れていると感じます。 綺麗な鍋が飾られるように並べられているのも、毎日大切に使っている事が誇らしいように思っているのだと思います。 その日々の1ミリ1ミリの確実な積み重ねが強固な自信となり、信頼やブランドへと育てていると思います。
食材と同じように、「鍋の背景」も大切にしたい
Karyonでは、有機栽培や無農薬栽培の野菜をはじめ生産者さんのメッセージが伝わるような食材を大切にしています。 だからこそ、調理に使う道具についても、「どこで、どのように作られているのか」は自然と気になるようになりました。 料理はもちろん食材だけで完結するものではありません。どんな鍋で、どんな工程を経て料理になるのか。その背景まで含めて、一皿の価値として表現可能な領域が拡げられると考えています。
シャスールとの出会いで感じた「信頼できる静けさ」
シャスールの鍋を初めて使ったとき、正直、強い主張は感じませんでした。 でも火を入れてみると、すぐに分かりました。火当たりが穏やかで素材が慌てないのにしっかりちょうど良く焼ける。鍋が前に出すぎず、コントローラブルに料理をきちんと支えてくれている。「この安心感や安定感は凄いな」と感じたのを覚えています。 フランス料理を、仕事として常に意識して料理してきたので、つい焼くという意図を明確に、煮るという意図を明確に料理を仕上げなければならないと思いがちで、それに関してもっとも適した鍋や調理道具を選んでいました。 もっとも適したものをいつも選択するという事は、何かと何かを繋ぐようなプロセスまで表現出来る味わい、というのを捨てていたように感じました。 この柔らかく、安定した味わいを表現可能にする道具は、職人的なプロ意識の中でつい忘れがちになってしまうポイントで、ここを忘れずに守れる道具があるのは本当に凄いなと思います。
シャスールの鍋
さらに惹かれたのは、フランスで鋳物づくりを続けてきた背景や、ものづくりに対する姿勢でした。 大量生産ではなく、手間を惜しまない工程があること。細部の美意識や鍋として質の高さの表現にこだわり、製造に関わっている職人がその美意識を理解して作る。そしてそこにきちんと対価が支払われていること。それは、有機野菜を選ぶ理由ととても近い感覚だと思っています。 使い込むほどに、鍋と料理人の距離が近づいていく。様々なシチュエーションで自分や料理を介して、理解を深めます。このような懐の深い製品や道具は意外と多くありません。
プロの現場で使い続ける理由
料理の現場では、自分が考えるべきことに集中できるかどうかが重要です。 シャスールの鍋は、料理を“早く仕上げるため”の道具ではありません。火の入りを過剰に気にしなくていい。素材と向き合う余白を残してくれます。 安全で背景のある食材ほど、乱暴に扱いたくない。シャスールは、その考えに静かに寄り添ってくれる存在です。結果として、料理の輪郭が自然に立ち上がってくる。輪郭を自然と立ち上げるという事は作為的であってはなりません。料理の着地点を明確にしながら恣意性を捨てる表現は自分一人では心細くて非常に困難です。チームがいて、信頼性の高い道具があってその料理表現が可能になっていきます。 それが使い続けている一番の理由ですし、人生を通して理解を深めていける楽しさがあります。
Karyonの料理とシャスール
煮込みや野菜料理など、素材の持ち味を引き出したい料理では特にシャスールの良さを実感します。 火を止めたあとも、鍋の中で料理が静かに完成していく。その“時間”まで含めて料理の一部だと考えていますし、心を癒し、満たして行く料理には必要な調理過程だと考えています。
家庭料理にこそ、良い道具を
家庭料理は、完璧である必要はないと思っています。少し味がぶれても、少し火が入りすぎてもいい。料理と食事を愛するならそのくらいの余裕がないと料理を楽しみ日常を充実させる事は不可能です。 ただ、家庭で作る料理だからこそ、素材のすべてを受け止める道具には目を向けてほしいと思います。重厚な鍋なので、扱いは面倒に思えてしまいがちですが、一生ものの道具として、相棒として、一つの愛情の受け皿として扱ってもらえれば生活の心の支えとして人生の役に立ってくれるはずです。 安心して美味しく楽しめる食材。そして、その良さをきちんと受け止めてくれる道具。良い鍋は、素材の良さを楽しませてくれる上に、ウキウキした心そのままに食卓へ運んでくれます。 そこに愛情が加われば、毎日の食卓は、自然と特別なものになっていくはずです。
共鳴し続ける料理を目指して
店名「Karyon」には、“共鳴”や“知性”といった意味を込めています。 フレンチレストランの文化としてシェフ個人が先に出てしまいがちですが、それだけにレストランの表現を委ねるのではなく、生産者や業者さん、チーム、そしてどのようにお客様と店が響き合いながら食事を楽しんで頂くのか。僕達の知性をまず初めに駆動させ、全員で共振させながら、お客様の心を満たすレストランをつくっていきたいと考えています。 これからも、積み重ねてきた経験や人と人の繋がりや影響などを土台にしながら、情熱的に、静かに、誠実に、料理と食事に向き合っていきたいと思っています。
シャスールを手にする方へ
良い道具は、使う時間を重ねることで、少しずつ手に馴染み、信頼関係が生まれます。 ぜひ、シャスールの鍋と向き合う時間そのものを楽しんでみてください。料理を楽しむ人生において、心健やかに過ごせる相棒役を担ってくれるはずです。
Web site : Restaurant Karyon